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入れ歯を初めて付ける平均年齢は?
2025.04.08
こんにちは、学芸大学の歯医者 碑文谷さくら通り歯科 院長の太田です。歯科医師になって26年、これまでの数多くの症例を見てきた中で今回は「入れ歯を初めて付ける平均年齢は?」について書いていきます。
入れ歯は、歯を失った際の治療法として昔から一般的に行われてきたものの一つです。近年ではインプラントやブリッジといった治療法も発展し、選択肢は増えましたが、依然として入れ歯を選択される方も多くいらっしゃいます。そこで気になるのが「入れ歯を初めて付けるのは何歳くらいからが一般的なのか」という点です。実は、年代ごとに口腔状態や生活環境も異なるため、一概に「○歳から付け始める」という絶対的な答えはありません。しかし、これまでの臨床経験や研究データから推察すると、ある程度の目安となる年齢層は存在します。本記事では、入れ歯を初めて装着する平均年齢や背景、そして入れ歯を長く快適に使うためのポイントなどについて詳しく解説していきます。ご自身やご家族の将来の歯の健康を考えるうえで、ぜひ参考にしてみてください。
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【目次】
- 入れ歯の種類と役割
- 入れ歯を初めて付ける平均年齢と背景
- 若い世代の入れ歯事情
- 入れ歯装着を遅らせるための予防対策
- 入れ歯を装着した後のメンテナンスの重要性
- 入れ歯と他の治療法(ブリッジ・インプラント)との比較
- まとめ
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【1. 入れ歯の種類と役割】
入れ歯には、大きく分けて総入れ歯と部分入れ歯の2種類があります。総入れ歯は歯が一本も残っていないケースで使用し、部分入れ歯は自分の歯が一部残っている場合に使用します。素材や構造、固定方法によっていろいろなタイプがあり、最近では金属床を使った薄型の入れ歯や、目立ちにくいノンクラスプデンチャーといったものも開発され、より快適さや審美性を求める傾向が高まっています。
入れ歯の役割は、失った歯の咀嚼機能を補うだけでなく、歯並びや顔貌を支えることにも大きく関係します。歯が抜けたまま放置すると、残っている歯が傾斜したり、噛み合わせがずれたりする恐れがあり、さらに顎の骨が吸収されることで顔貌にも変化が出やすくなります。このようなリスクを防ぎ、日常生活の質を維持する上でも、入れ歯というのは大変重要な選択肢といえます。

【2. 入れ歯を初めて付ける平均年齢と背景】
入れ歯を初めて装着するのは、一般的には60~70代に入ってからというケースが多いとされています。しかし、近年は歯周病や虫歯による早期の抜歯、ライフスタイルの多様化に伴う食生活の変化などから、50代でも部分入れ歯が必要になる方も決して少なくありません。特に、仕事の忙しさや自己管理不足、歯科医院への通院が難しい環境など、様々な要因が重なることで、若い年代から歯を失ってしまうことも起こり得ます。
高齢化が進む日本では、いわゆる後期高齢者(75歳以上)の方を中心に、総入れ歯を使用している方が増えています。厚生労働省の調査によると、高齢者においては既に半数以上の歯を失っているケースが珍しくないため、総入れ歯が選択される割合が高くなるのです。一方で部分入れ歯に関しては、50~60代で初めて装着する方も多く、実態としては「初めての入れ歯=総入れ歯」というよりは「部分入れ歯からスタートして、最終的に総入れ歯になる」という流れが多いように感じられます。
【3. 若い世代の入れ歯事情】
「入れ歯は高齢者だけのもの」というイメージを持っている方も多いかもしれません。しかし、実際には30代や40代で部分入れ歯が必要になるケースもあります。主な原因としては、重度の虫歯や歯周病の放置、外傷による歯の欠損などが挙げられます。特に、忙しさから定期検診を受ける機会を逃し、口腔内のトラブルを放置したまま悪化させてしまうと、抜歯が必要な状態にまで至ることがあります。
若い世代で入れ歯を付けることには心理的抵抗もあるでしょう。しかし、欠損をそのままにしておくと、周囲の歯に大きな負担がかかり、さらに歯を失うリスクを高めることにもつながります。早い段階で適切な治療を受け、必要であれば入れ歯を装着することで、逆に将来にわたって多くの歯を守ることにもなるのです。
【4. 入れ歯装着を遅らせるための予防対策】
入れ歯を付ける平均年齢を上げる(=できるだけ歯を失わずに長く自分の歯を残す)ためには、日々の予防が不可欠です。とくに歯周病は、日本人の歯を失う最大の原因とされており、歯周ポケットのケアや歯石除去、定期的な歯科検診が何よりも重要です。歯周病は痛みが少ないまま進行する場合があり、気がついたときには歯を支える骨が溶けてしまっていることもあります。
また、食生活や生活習慣の改善も大切です。甘いものや炭水化物中心の食生活は虫歯リスクを高めますし、喫煙は歯周病悪化のリスクを飛躍的に高めます。さらに、ストレスが多い環境は免疫力を低下させ、口腔内の細菌が増殖しやすくなるなど、多角的に口腔トラブルのリスクを押し上げる要因となります。こういった生活習慣を見直すことが、結果的に入れ歯装着の時期を遅らせることにつながります。
【5. 入れ歯を装着した後のメンテナンスの重要性】
入れ歯を装着して終わり、というわけではありません。入れ歯が口に合わない、噛み合わせがおかしい、食事がしづらいといった問題が生じる場合もあるため、定期的に歯科医院で調整を受けることが大切です。入れ歯は使っていくうちに摩耗したり、経年的に顎の骨が変化して合わなくなったりします。痛みや不快感を我慢して放置すると、他の歯や顎関節にまで悪影響を及ぼす可能性があります。
また、入れ歯の清掃も重要です。食べかすが付着したままだと細菌が増殖し、口臭や歯茎の炎症、さらには全身への悪影響(誤嚥性肺炎など)につながる恐れがあります。入れ歯専用のブラシと洗浄剤を使い、毎食後にしっかりケアすることを心がけましょう。寝るときは入れ歯を外し、専用洗浄剤や水に浸しておくことも基本的なルールの一つです。
【6. 入れ歯と他の治療法(ブリッジ・インプラント)との比較】
歯を失った際の治療法には、入れ歯だけでなくブリッジやインプラントという選択肢もあります。ブリッジは隣の歯を削って支台とし、連結した人工歯を装着する方法です。インプラントは顎の骨に人工歯根を埋め込み、その上に被せものを装着します。
ブリッジは自費・保険いずれの場合でも比較的導入しやすい反面、支台となる歯への負担が大きく、削る量が増えるというデメリットがあります。インプラントは、見た目や噛み心地が自分の歯に近いという利点がありますが、外科的処置が必要で費用も高額になることが多く、全身状態によっては施術が難しいケースもあります。
一方の入れ歯は、他の歯を削る量が比較的少なく、対応範囲が広いのがメリットです。総入れ歯の場合は、歯が一本も残っていない状況での対応にも適しています。費用面でも保険診療から自費診療まで幅広く選べる点が特徴です。患者さんのライフスタイルや口腔内の状況、経済的事情などを総合的に考慮して、自分に合った治療法を選択することが重要です。
【7. まとめ】
今回は「入れ歯を初めて付ける平均年齢は?」というテーマを中心に、入れ歯の種類や若い世代の入れ歯事情、予防対策、メンテナンスの重要性などについてお話しました。多くの方が60~70代で初めての部分入れ歯を経験し、その後の状況によっては総入れ歯に移行することも珍しくありません。ただし、若い世代でも虫歯や歯周病などによって部分入れ歯が必要になるケースも増えてきています。
入れ歯は、失った歯の機能や見た目を補ううえで重要な治療法ですが、もっと大切なのは「できるだけ歯を失わないこと」です。定期的な歯科検診で早期治療とメンテナンスを行い、正しいケアを継続することで、歯を失うリスクを最小限に抑えることができます。もし歯を失った場合には、入れ歯以外の治療法も視野に入れながら、専門家と十分に相談して最適な治療を受けましょう。
歯は健康的な食生活やコミュニケーションにおいて大変重要な役割を担っています。入れ歯に対する正しい知識やケア方法を身につけることで、年齢を問わず充実した生活を送ることができるでしょう。歯でお困りの際や、将来に備えた口腔ケアの方法を知りたい方は、ぜひ歯科医院にご相談ください。これからも健康な歯とともに、豊かな毎日を過ごしていきましょう。
碑文谷さくら通り歯科
院長 太田 彰人
日本歯周病学会 認定医
日本顎咬合学会 認定医
かみ合わせ認定医
厚生労働省認定研修指導医
歯学博士

