こんにちは、学芸大学の歯医者 碑文谷さくら通り歯科 院長の太田です。
歯科医師として26年、歯周病と糖尿病が「双方向」に影響し合う現場を数多く経験してきました。血糖コントロールが乱れると歯周病は悪化しやすく、逆に歯周病の炎症が続くとインスリン抵抗性が高まり血糖が安定しにくくなる――この悪循環を断ち切ることが、全身の健康維持に直結します。初診の流れは初めての方へをご覧ください。
概要
歯周病はお口だけの病気ではありません。歯周ポケット内で持続する慢性炎症は、炎症性サイトカインの産生増加を通じて全身に波及し、血糖指標(HbA1c)を不安定にさせる場合があります。一方、糖尿病のコントロール不良は免疫応答の低下や創傷治癒の遅延を招き、歯周病の治療が進みにくくなる要因です。だからこそ、口腔と全身を同時に見る発想が不可欠です。定期管理の要点はメインテナンスと予防歯科でも詳しくご案内しています。
目次
なぜ歯周病が血糖を悪化させるのか
歯周病は細菌バイオフィルムによる慢性炎症です。炎症が長期化すると、TNF-αやIL-6などのサイトカインが増え、インスリンが効きにくい状態(インスリン抵抗性)に傾きます。つまり同じ食事・運動量でも、全身の炎症負荷が高いほど血糖は上がりやすくなるのです。
臨床では、歯周基本治療とセルフケアの徹底により歯肉からの出血が減り、腫れ・発赤が落ち着いてくると「食後の高血糖が以前より安定した」と話される方を多く経験します。もちろん個々の背景(年齢、体重、服薬、睡眠など)で差はありますが、「まず炎症を下げる」ことが血糖コントロール改善の土台である点は変わりません。歯ぐきの出血や口臭、歯の動揺が気になる方は、まず歯周病治療のページをご確認ください。
糖尿病があると歯周病が進みやすい理由
糖尿病では高血糖により白血球の機能低下、血管障害、末梢循環の悪化、創傷治癒の遅延が生じやすく、歯周組織の防御力が落ちます。さらに口腔乾燥や唾液性状の変化が清掃の難易度を上げ、バイオフィルムの成熟を助長します。結果として、同じプラーク量でも炎症が強く長引く傾向があり、組織破壊が進みやすいのです。
この悪循環を断つためには、医科と歯科の「同時並行」の発想が重要です。血糖の自己管理(食事・運動・睡眠・服薬)と並行して、口腔内ではプラークコントロール、咬合力の是正、清掃性の高い補綴設計を行います。スムーズな受診導線は初めての方へにまとめています。
当院の歯周基本治療:3つの柱(炎症除去・セルフケア・生活改善)
1)炎症除去:スケーリング・ルートプレーニングで歯石とバイオフィルムを除去し、必要に応じてポケット内洗浄を行います。咬合性外傷が疑われる部位では、噛み合わせの接触関係を点検・調整します。局所的な力の集中は歯周組織を壊し、治癒を妨げるため、早期に是正します。
2)セルフケア:歯列形態や手指の可動域、生活動線に合わせて、歯ブラシ(ヘッドサイズと毛の硬さ)、フロス、歯間ブラシを選定し、当て方・動かし方・順番を具体的に設計します。短時間で再現可能なブラッシング計画に落とし込むことで、毎日続けられる環境を作ります。セルフケアの詳細は予防歯科をご参照ください。
3)生活改善:食習慣(間食の頻度・就寝前の摂取)、喫煙、ストレス、睡眠の質、口呼吸など、炎症を悪化させる日常因子を一緒に見直します。特に喫煙は末梢循環を障害し、治癒を遅らせます。段階的な減煙・禁煙の計画をおすすめします。
補綴の適合やマージン位置が不適切だと、清掃が行き届かず炎症が再燃します。必要に応じてやり直しの少ない治療の方針で、被せ物・詰め物を再設計し、封鎖性と清掃性を両立させます。
メインテナンス間隔の考え方と目安
初期治療で炎症を鎮静化した後は、基本的に3か月ごとの来院を基準にします。BOP(出血率)、ポケットの深さ、動揺度、プラーク付着傾向、生活変化(仕事の繁忙・睡眠不足など)を踏まえて、必要に応じて間隔を短縮・延長します。安定している方は4〜6か月へ、再燃の兆候があれば2か月に短縮するなど、動的にコントロールします。
メインテナンスでは、バイオフィルム・歯石・着色の除去、歯ぐきの検査、咬合チェック、必要に応じたフッ素塗布や器具の見直しを行います。詳細はメインテナンスをご覧ください。

補綴・噛み合わせの見直しで“再燃”を防ぐ
深いポケット周囲に不適合補綴があると、清掃困難が続き炎症が再燃します。歯列不正や過大な咬合力も組織破壊の増悪因子です。必要に応じて矯正治療で咬合を再設計し、残存歯の負担を軽減します。欠損部は清掃性と機能性を両立する設計で補綴し、選択肢として入れ歯やインプラントを検討します。外科的対応が必要な場合は口腔外科と連携し、安全性を最優先に治療計画を組み立てます。
治療の繋ぎ目である補綴とメインテナンスの質が、5年・10年先の安定性を大きく左右します。実際の流れや仕上がりイメージは症例紹介も参考にしてください。
費用の目安と透明性
基本的な歯周基本治療は保険適用範囲で実施できます。選択する材料・器具、補綴設計、増骨や外科処置の有無などにより自費を併用するケースもあり、その場合は事前にメリット・デメリット・代替案を比較してご説明します。費用の目安は価格表をご参照ください。短期的な支出だけではなく、再治療の減少や抜歯回避による長期の医療費圧縮という観点も重要です。
まとめ:血糖と歯ぐきは「二人三脚」で整える
歯周病を放置すると血糖コントロールは難しくなり、血糖が乱れると歯周病の治療が進みにくくなります。この悪循環を断ち切る第一歩は、炎症の可視化と原因除去、そして定期管理です。学芸大学・碑文谷エリアで歯周治療と全身管理を両立したい方は、歯周病治療とメインテナンスページをご覧のうえ、ご相談ください。むし歯の併発が疑われる場合は虫歯治療へ、長期安定の設計思想はやり直しの少ない治療をご参照ください。
碑文谷さくら通り歯科
院長 太田 彰人
日本歯周病学会 認定医/日本顎咬合学会 認定医/かみ合わせ認定医/厚生労働省認定研修指導医/歯学博士
