こんにちは、学芸大学の歯医者 碑文谷さくら通り歯科 院長の太田です。
インプラントは「よく噛める」「見た目が自然」など多くのメリットがありますが、成功のカギは治療前の準備と見極めにあります。歯科医師として26年、私は「やれば良い」ではなく「やって良い条件を満たしているか」を厳しく評価し、長く安定させるための設計とメインテナンスまでを包括的に考えます。本記事では、学芸大学・碑文谷エリアでインプラントを検討している方に向けて、事前に押さえるべき10のポイントをわかりやすく解説します。初診の流れは初めての方へをご覧ください。
目次
まず理解したい:インプラントの「得意」と「不得意」
インプラントは、天然歯に近い咀嚼感と審美性を再現できる一方、清掃をサボると炎症(インプラント周囲炎)を起こしやすい治療でもあります。残存歯の状態、清掃技術、噛み合わせの癖が整っていないと「埋めた後」に問題が起きやすい。だからこそ、治療前に予防歯科とメインテナンスの習慣化を先に作ることが成功率を底上げします。歯を失った理由(むし歯・歯周病・破折・外傷)も洗い直し、同じ原因を残さない設計へ。むし歯の再発傾向が強い方は虫歯治療、歯周炎が残る方は歯周病治療で土台を整えます。
CTで骨の量・質・形を立体評価する
レントゲンだけでは見えにくい、骨の厚み・高さ・形態・神経や上顎洞との距離を把握するために、CTはほぼ必須です。骨幅が不足しているのに無理に短いインプラントを入れたり、頬舌方向の傾斜を読み違えると、清掃性・耐久性が落ち、審美的にも不利になります。CTからサージカルガイドを作製し、埋入角度と深さを再現性高くコントロールするのが現代の標準。外科的な難易度が高いケースでは、口腔外科との連携を行います。
歯周病がコントロールされているか(炎症ゼロに近づける)
歯周病が残っている口腔内にインプラントを入れると、周囲炎のリスクが高まります。BOP(出血)、深いポケット、残存歯の動揺、噛みしめ癖などを総合評価し、まずは原因除去。必要なら補綴の適合やマージン位置も見直し、清掃性を高めます。詳しくは歯周病治療とメインテナンスをご覧ください。
「歯周病を治してから入れる」──この順番が、10年先の安定性を左右します。
噛み合わせと力の方向:破折・スクリュー緩みを防ぐ設計
インプラントは天然歯と違い、歯根膜によるクッションがありません。そのため、咬合接触の偏り、パラファンクション(歯ぎしり・食いしばり)、食片圧入などの力学的ストレスがダイレクトにかかります。対策は、接触点の分配、側方力の低減、咬頭形態のコントロール、必要時のナイトガード。連結の有無やスクリュー固定/セメント固定の選択もケースバイケースです。補綴全体の思想はやり直しの少ない治療にまとめています。
全身疾患と服薬のチェック(糖尿病・骨粗鬆症・抗凝固薬など)
血糖コントロール不良、喫煙、未治療の高血圧、長期のステロイド・免疫抑制剤、骨粗鬆症治療薬(ビスホスホネート系/デノスマブ等)や抗凝固薬の服薬状況は外科の可否・術式選択に影響します。自己判断で中止は厳禁。主治医と連携し、安全域を確保したうえで計画します。糖尿病の方は歯周炎が重くなりやすい傾向があるため、術前に炎症をしっかり下げることが重要です(関連:歯周病治療)。
喫煙・口呼吸・清掃難易度の評価
喫煙は末梢循環を悪化させ、インプラントの生着と治癒を妨げます。可能な限り禁煙、少なくとも減煙が望ましい。口呼吸は乾燥を招き、プラークが付着しやすく清掃難易度が上がります。器具選択(ワンタフト、歯間ブラシ、フロス)と当て方・順番までを個別に設計し、予防歯科で習慣化を支援します。メインテナンスのリズムを先に作ってから手術に入るのが理想です(メインテナンス)。
骨造成やサイナスリフトが必要かどうか
骨の量が足りない場合、GBR(増骨)、ソケットプリザベーション、上顎洞の底を挙上するサイナスリフト/ソケットリフトなどを検討します。増骨は治療期間が延びる一方、清掃しやすい補綴形態を実現できるメリットがあります。難易度が高いケースでは段階的治療を採用し、無理のないスケジュールで進めます。外科全般は口腔外科のページもご参照ください。
治療計画と費用の透明性
「いつ・どの部位に・どの径と長さを・どの角度で・どの補綴で仕上げるか」を見える化します。仮歯の期間、食事制限、仕事や部活への影響、合併症の説明、想定通院回数まで共有。自費治療になりますので、費用の目安は事前に提示し、代替案との比較を行います。概算は価格表をご確認ください。被せ物の材質や連結設計でも費用と清掃性が変わるため、長期安定とメンテナンス性を軸に選びます。
術後メインテナンスと“外れやすい人”の特徴
インプラントは入れて終わりではありません。術後は3か月前後を基本に、メインテナンスでバイオフィルム除去、ポケット検査、咬合の微調整、清掃指導を継続します。外れやすい人の共通点は、清掃が不十分、歯ぎしりが強いのにナイトガード非使用、定期管理が途切れる、糖質頻度が高い、喫煙がやめられない——など。心当たりがあれば、手術前にここを整えておくことが成功率の底上げにつながります。
インプラント以外の選択肢も比較する
状況によっては、入れ歯やブリッジのほうが安全・低侵襲・費用面で適切なこともあります。清掃性や咬合、残存歯の予後を踏まえて、最善策を一緒に選ぶのが当院の方針です。すでに他院で立てた計画のセカンドオピニオンも歓迎します。実際の症例イメージは症例紹介を参照ください。治療全体はインプラントページにまとめています。
まとめ:手術は“ゴール”ではなく“スタート”
インプラントの成否は、術前評価→外科→補綴→メインテナンスの一連の質で決まります。CTでの安全域確認、歯周病の鎮静化、噛み合わせの設計、全身疾患への配慮、生活習慣の是正、そして通い続けられるメンテナンス動線。これらが揃ってはじめて、10年先の安定へと近づきます。学芸大学・碑文谷エリアでインプラントをご検討の方は、まずは初めての方へから受診手順をご確認いただき、疑問点をお知らせください。関連ページ:インプラント/歯周病治療/メインテナンス/価格表/症例紹介。
碑文谷さくら通り歯科/学芸大学駅 徒歩圏
院長 太田 彰人
日本歯周病学会 認定医/日本顎咬合学会 認定医/かみ合わせ認定医/厚生労働省認定研修指導医/歯学博士
