

ブログ
糖尿病と歯周病の深い関係
2023.01.30
歯科医師になって25年、今日はその経験をもとに糖尿病と歯周病の関係について記述したいと思います。
「糖尿病」「歯周病」という言葉を聞いても、それぞれが生活習慣病のひとつとされていることくらいしか、共通点を見いだせない方が多いと思います。
ところがこのふたつは深く関連していて、お互いに影響を及ぼしあっています。
糖尿病と歯周病の深い関係
まずは歯周病が糖尿病に及ぼす影響について紹介します。
歯周病は皆さんご存知のとおり、歯周ポケットと呼ばれる歯と歯ぐきの境目のすき間に細菌が入り込んで炎症を起こすことから始まり、徐々に歯の周辺組織を侵していくという病気です。
炎症を起こした細菌は歯周病で出血した歯ぐきから直接血液のなかに入り込んで全身を駆けめぐります。
歯周病を起こす細菌の多くは、内毒素と呼ばれる非常に強力な毒素をもち、細菌が死滅しても内毒素は残って、TNF-α(腫瘍壊死因子)という物質の産生を強力に推し進めます。
このTNF-αは、血糖値を下げる働きをもつホルモンであるインスリンを作りにくくするはたらきがあることがわかっています。
このことにより、血糖値のコントロールがより困難になり、糖尿病を悪化させます。
次に糖尿病がもたらす歯周病への悪影響です。
まず、高血糖の状態になると白血球のはたらきが低下して、感染症に対する抵抗力が弱くなります。
歯周病も感染症のひとつですので、罹りやすくなります。
また糖尿病ではインスリンが足りなかったり、充分働かないことにより、ブドウ糖をエネルギーに変える力が弱まります。
代わりに筋肉のたんぱく質や脂肪が分解されるようになるのですが、こうした代謝の変化は歯周組織内のコラーゲンの減少やその特性に変化を起こし、歯周組織の弾力性が失われたり、破壊された組織の修復力も弱くなったりします。
加えて、高血糖状態では、腎臓がブドウ糖を吸収しきれなくなるために、多量の水分とともに尿中に排出しようとします。
その結果、体内の水分が減少します。
同様に唾液の分泌量も減り、喉や口の渇きという症状が現れます。
唾液は食べ物の消化を助けますが、ほかにも口腔内の浄化作用や組織の修復を行って、歯周病の予防に貢献しています。
糖尿病ではこれらの作用も十分に機能しなくなり、歯周病を進行させます。
これら以外にも、近年わかってきた脂肪細胞が作る物質の影響や、血管壁の変化や脆弱化といった血管障害、歯がグラついてよく噛めなくなってしまうことによる食後高血糖など、相互に良くない影響を与えます。
逆にどちらかがよくなればもう一方も改善するという研究も進んできていて、血糖値の改善で歯周病になりにくくなったり、歯周病の治療で糖尿病の症状が改善した、といった調査結果も多く耳にするようになってきました。
日本歯周病学会認定医 太田彰人

